実を言うと今回のM3秋2022は、結構申し込みギリギリまで参加するかどうか悩んでいた。それというのは単純に仕事が忙しいというか流石にもう相応に責任のあるポジションに就いており、音楽に割けるリソースが(元から然程多くなかったけど)目減りしているという事に尽きる。たまたま書き溜めていた&他の名義で発表するには抵抗のあるゴシック系やドゥーム系のストックが10曲あり、そこから3曲を厳選&残りは書き下ろしでどうにかアルバムの体裁が整う目途が付いたといった形だ。
ついでに書いておくと今回のアルバム制作は腰椎椎間板ヘルニアの再発の時期と被っており(※まだ完治してない)、とにかく座ってあまり作業できないのでギターとベースのレコーディングはだけでなくミックス作業も健康上の理由で相当難航した。本業の方もヘルニアのせいで昇降デスクを購入して立ち作業の時間を多くして、というかここ暫くは座ってプログラムを書く時間があまりないぐらいなのだが、そのせいで余計疲弊したり仕事の時間が伸びたりして音楽制作の時間が減り……という負のスパイラルに絶賛陥り中なのだが、そんな中で完成まで漕ぎ着けられたのはまあ昔のデスマーチ体験が嫌な形で生きている気がしなくもない。
なお今回の新譜は俺の重要なルーツであるゴシックメタル/ドゥームメタルに立ち返り、日本のメタルファンとかM3の参加者の好みを100%無視して作った作品なので、過去一番お勧めしない。多分Lycanthropeの極悪な高速デスメタルの方がまだ速くて気持ちいい分日本人受けするんじゃないかな……。
1. My Tortured Eyes
確か割と早い段階で書き下ろした曲だと思う。イントロのメロディから完全にParadise Lostへのラブコールというかオマージュというか、お前はどれだけGregor Mackintoshの事が好きなんだという感じ。ギターソロも完全にGregorの影響下のフレーズを弾いている。ギターソロとその前の小展開を除けば、VerseとChorusだけでシンプルに構築されているのも近年のParadise Lostの某曲を意識した結果。
歌詞は虐待の連鎖や学習性無気力をモチーフにしている。お前はそんな歌詞しか書けないのかと聞かれそうだが、本当にこういう歌詞しか浮かんでこない。今後も陰惨な歌詞ばかり書く可能性が高いので、覚悟してくれ。
2. Fragile
誰がどう聴いても後期Sentenced、というか後期SentencedをTaneli Jarvaのスタイルで歌ったような曲。ギターソロも完全にMiika Tenkulaっぽいフレーズから始まるが、途中で微妙にGregor Mackintoshっぽくなるのはご愛敬。なおChorusは息継ぎなしでフレーズを歌いきるのがスクリームだと困難な箇所が多々あったのでクリーンで歌おうかとも思ったが、結局は編集で何とかする事にした。(仮にライブやる時が来てもこの曲はやれんな。)
歌詞はたまにはラブソングでも書こうかと思って書いたら、恋人に裏切られた結果精神を病んで心中するみたいな歌詞になってしまった。アレ?
3. Thus I Cut My Wings
基本的に俺のゴシック系のアプローチの影響元は概ねParadise LostかSentencedなのだが、My Dying Brideもいくらか聴いているので、この曲はそこからの影響を結構感じると思う。(MDBというよりは元MDBのHamish Glencrossが結成したgodthrymmかもしれない。)
これは俺にしては展開を凝った曲で、Verse, Pre-Chorus, Chorusで構成された曲の主幹である第一部、クリーンギターのアルペジオで始まる繋ぎの第二部、アコギのストロークと共にテンポを上げてクライマックスに向けて突進する第三部と三部構成にしている。最後の第三部はちょっとSentencedからの影響があるかもしれない。
歌詞は何となく書き始めて発想を膨らませた結果、自分の才能に驕った末に自分の首を絞める事になって目が覚めたみたいなニュアンスの歌詞になっていると思う。などと書いていて気付いたがこれは山月記か。
4. A Leaden Sky
確か去年の元旦に毎年恒例の一日で一曲メタルを仕上げるチャレンジで書いた曲だったと思う。概ねPeaceville Threeからの影響バリバリのゴシックドゥームだが、途中のテンポを上げて三連ノリになるところはBlack Sabbathへのオマージュ。一気に書き上げた割りにはいい曲というかまあまあ気に入っていたので、録り直して歌詞を書いて収録した。
なお歌詞は何についての歌詞なのか書いた俺がよくわかっていない。曲に合わせて適当に叫んだフレーズを文字起こしという作詞スタイルなので、上手い具合に意味を見出したりこじつけられないとこうなる。まあ明るい内容ではないのでいいか。
5. Silent Heart
Paradise Lostのアルバムのボーナストラックに入っていそうなゴシックメタルという凄まじいニッチを狙って書いた曲。この曲は何気に難産というか、Chorusをスクリームで歌えなくもないがどうしても違和感が拭えず、試しにクリーンで軽く歌ったらそちらの方が明らかに良かったので、歌メロの楽譜をまったく書いていない状態でクリーンで歌うという暴挙に出た。というか今もヴォーカルのメロディは楽譜に書いていない。普段は細かいピッチ補正のためにちゃんとメロディを書いているんだけど、これはF#マイナーというざっくりした補正しかかけていない。
歌詞は怒りや憎悪といった負の感情を乗り越えることについて。俺はメロディ含めてアルバム中の味変というか、気分転換というか、そういう感じを狙って明るめの曲を書いたつもりだが、周囲からは「十分暗い」と言われて困惑している。いやこれ短調の曲だけど明るいよね?
6. Die in Pain and Grief
「またParadise LostとBlack Sabbathを悪魔合体させたのか」と言われそうな曲。いやまあ、今回は自分の欲望だけに忠実に、志とか自分の成長のための挑戦とかそういうの一切何もなし曲を書いたので、こういう合体事故みたいな曲が出来上がってしまうわけでな。何気にギターソロはアルバム中で一番気に入っている。
歌詞は少しラヴクラフト的な恐怖世界を意識して書いた。なんでまた御大の世界観を持ち出したのかと言われれば、歌詞が中々思いつかない時にどうにか捻りだした結果がこれ。まあLycanthropeで何曲もラヴクラフトものの歌詞を書いているし、俺の作風という事で。
7. Harvester of Weeping Souls
これは一昨年にLycanthropeのCataclysm and Chaosの制作中に書いて、流石にこれはちょっと雰囲気が違い過ぎるという事で一旦お蔵入りにした曲。というかこの曲をきちんとした形で世に出すのが目的だったまであるかもしれない。アルバム中最もドゥーム色が強い、というかフューネラルドゥームにかなり接近したアプローチを取っている曲で、この曲以外にもフューネラル系のアプローチに近い曲のアイディアがあるので、やる気と機会が巡ってきたらそれらも世に出そうと思う。
なお他の楽曲とは血筋が少々異なり、過剰なまでにディレイとコーラスで装飾されたクリーンギターはDisembowelmentからの影響が強い。また、Chorusが終わってからの終盤のパートはKYPCKへのオマージュ。(まあKYPCKは半分ぐらいSentencedだけど。)
歌詞は死による苦痛からの解放がテーマ。まあそのままストレートに安楽死とも言えるし、ある意味ではグリーフケアとも取れると思う。
8. Void
いつだかにTwitterに投稿したドゥームアンビエントの小曲に空間系のエフェクトなどを少々足した謎の小品。アルバムの頭に入れて意表を突くか、アルバムを聴き終えた後に腹の中に鉛を入れられたような重苦しい余韻を残そうか考えた結果、周囲にも相談のうえで後者にした。